農業、食、コミュニティと時々落語。

これまでと今とこれから。

ベトナム31日目

【オーガニックライス農場】

今日訪れたオーガニックライス農場は前回訪れたVACシステムとEMROを兼ね揃えてオーガニックライスをやっている農場とは違う制度を利用していた。過去に何度か紹介したと思うがPGSシステムでは地下水を利用しなければいけないことからコストと水の問題でオーガニックライスは難しい。また、PGSは野菜/果樹だけに対してなので、そもそもお米用の認証はない。
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【PANCI SAFE RICE】

2012年5月にJICAと東京大学ベトナム国立農業大学の研究調査の一環として、「PANCI SAFE RICE」というプロジェクトが始まった。PANCI とはの略であり、このプロジェクトはSRIメゾットを基板としている。SRIとは「System of Rice Intensification」の略である。このプロジェクトはまだ認められてはいないものの、オーガニックライス用の取り組みとしても認証が認められたとしてもベトナム初である。


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【農場について】

現在6ha、1グループ34人の農家が所属している。リーダーが検査官勉強を終えているので検査官の役目もこなす。したがって別グループが出来た際にはPGSと同じようにお互いをチェック出来るようなシステムとなる。2012年5月のプロジェクト発足時は0.5ha、8農家だったのがいまでは面積は12倍、人数は約4倍まで増えている。この短時間でここまで人数が増えたのは元々オーガニックに興味がある農家が多かったからである。6haは集約された土地となっており、政府によって土地改正が行われ、今までバラバラだった農地が1.5ha,3ha,1.5haと3つ連なった集約農地となった。年間の売上は二期作で810ミリオン/年。これを34人の農家が農地改革される前に元々持っていた土地分だけ分配される。


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※何故かみんな真顔

【農場について2】

土地のは6haに集約されているのだが、元々あった土地分を6haの中でまた分けている。つまり、1農家がもともと300㎡の土地を元々持っていたら、その面積分を区切って、その面積分しか働かないのである。これでは土地を集約したメリットを活かしきれていないと思ってしまう。手作業なので仕方ないことなのかもしれないが。
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【歴史】

そもそも、なんでこんなにも多くの人がオーガニックに元々興味を持っていたのか。この土地も昔は慣行農法でお米を育てていたが、30年前に2人殺虫剤、除草剤によって人が亡くなっていることによる。1人は殺虫剤、除草剤を散布する役目として雇っていた人。もう1人は、それらの化学薬品を倉庫で管理していた人。そのため、オーガニック農業を始める前から定められた量よりも少なめの化学薬品を使用していた。



【他の農家との関わり】

6haもの土地を所有しているが、オーガニックライスの6haはこの地域の田んぼの1部にすぎない。なので、他の農家は慣行農法なのである。そのことについて聞いてみた。
①周りの農家も化学薬品使用回数は通常よりは少ない
②他の田んぼとの間は最低でも4m以上
③水路に近いところに土地があるので、他の農家が使った化学薬品の流入を防ぐことが出来る
④水は近くの川からだが、炭による浄化を行っている

。
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【販売先】

このプロジェクトにさんかしているグループは現在200人の顧客を持っている。この数は莫大な数であり、全て直接販売として販売している。こんなにも多くの顧客を獲得できた理由はプロジェクト発足当初、都市部(ハノイセンター)に出向き無料で消費者やお店やホテルなどに配っていた。そしてその中で気に入った人からの連絡を待ち、あとは口コミで広がっていったという。





【需要と供給】

現在、需要と供給はマッチしておりもっと土地を増やしたとしても売り先が無いので、売れ残りとなるか値段を下げるしかない。会社に売らないのか?という問いにはベトナムに行っている。ライスを証明する組織・認証が無いので、会社はオーガニックライスとして買ってくれない。南に同じ様にオーガニックライスをやっている農家があるらしいがそこはUSDAのオーガニック認証を受けいる。これにより、信頼される商品として初めて取引が成立する。したがって
①買い手の増加
②認証組織・制度の確立
③他の農家の意識改革
が要求される。



ベトナムの面白農業事情】
ベトナムの農家は勉強会に出ると政府からお金を貰える。むしろ、お金を貰えないと参加しない。これは政府から勉強会を開いたときはもちろん、農家から勉強会を開いて欲しいという要望があったときもお金が発生する。このオーガニックライスプロジェクトも、JICAが勉強会を開くのだが、これもお金が発生するのである。