農業、食、コミュニティと時々落語。

これまでと今とこれから。

インタビューその8

【農場】
この農場のオーナーは2009年に前職である農業関連会社の会計士から独立するカタチで農地を購入した。2014年1月にハノイセンターに農産物を加工/販売するお店兼、事務所をオープンさせ、会社法人化したために前回の 農場と一緒で政府からの援助は一切ない。そしてPGSにも属していないのでグループではなく個人でやっている。このお店の加工のプロセスを近い将来、農場に加工場を作り農場で生産~加工までやるようにしたいと意気込んでいた。



【VACとEMRO】

この農場はVACというベトナムの伝統的な農業を軸にEMROという沖縄のオーガニック認証機関を受けてオーガニック農業を営んでいる。VACが伝統的といっても50年前くらい出来た農法らしいが。VACとは【魚の養殖】と【作物】と【家畜】の3つを循環させるやり方である。つまり、家畜の糞は肥料にもなるし、魚の餌にもなる。野菜のカスや雑草は家畜の餌や堆肥作りに活用できる。作物、家畜はもちろん魚も収入源として見込めるといったシステムである。
このVACとオーガニック農業(EMRO)を組み合わせた農場は初めてのケースであり、これからの農家のモデルとなる様にして行く予定である。



【農場について】

労働力は2人で給料は4ミリオンVDN/月である。この労働力の数は充分では無いが、現在の稼ぎだとこれが精一杯である。お米の収穫時期などの農繁期にはアルバイトを雇っている。農場の面積は2haであるり、その内訳は0.5ha:家畜(野菜)、0.5ha:養殖、1ha:米となっている。家畜は鶏が300羽、ブタが10匹、猪が10匹。野菜は10種類位で面積もほとんど無い。お米の水は天水と近くの川から水をひいている。その水は前回紹介した地下水では無いが、地下水を使う必要があるのは、PGSに沿っている場合でありこの農場はEMROに沿っているのでその必要が無い。その代わり、EMROに沿って水にEMを散布している。



【お店】

オンライン販売はしておらず、紹介のみであるが、ウェブサイトもある。
こちらも労働力は2人。オーナーはマネージャーも兼任している。Giang namというのがお店の名前であり、現在これは政府に申請して商標登録されているオリジナルブランドであるという。Giang namはオーナーの息子の名前である。Vietnam Trust Food Gold Prizeというものを受賞しているらしいが、消費者はがこれを信じるのは50%くらいだという。「本当にお客さんに信じて貰いたいのであれば、良いものを作る以外に無い。」と言っていた。



【価格】

お米とお肉は通常のものに比べて2~2.5倍、野菜は2~3倍であるが、今はまだ充分な供給量が確保出来ていないという。



【オーガニック農業を始めた理由】

ここのオーナーもはやり、本やニュース、新聞などから食の安全や環境問題に興味を持ったことがきっかけで、自分の健康や社会問題を守りたいという気持ちと、自分で生態系(経済)を田舎で作りたいという気持ちを持っていたからである。この田舎というのはオーナーの夫の故郷でもあり、親戚がすぐ近くに住んでいるのでお互いに助け合うことが出来るという。現在、夫は他の会社で働いている。



【サポート】

ココは1つの会社が運営していることになっているので、政府からのサポートは受けられらない。また、2009年に農場を作った際には会社では無かったために政府のサポートを受けられる立場ではあったのだが、申請の仕方やそもそもサポートが受けられるとは知らなかったそうである。そして現在、彼女はこの農場を1つのモデルとしたいと考えておりサポートを外国(日本やイスラエル)から受けたいと考えている。(現にオーガニック認証機関は日本)理由としては、お金をベトナムよりも持っていることと、技術的な面でのサポートを望んでいるという。



【曖昧なオーガニック畜産制度】

一応条件として

・フリーレンジであるということ。

・餌が50%オーガニック由来であること

・工業用食品は与えてはいけないこと。
・餌としてGMOは使用してはいけないこと
・病気になったら薬を与え、治ればまた一緒にするということ。
の以上のことが挙げられていたが、薬の投与などは曖昧だと感じる部分があるのとフリーレンジ?と疑問に思う農場だったので曖昧なオーガニック家畜制度とした。



【問題点1】

とにかくベトナムのオーガニック農業事情はややこしい。ベトナムでは国が定めるオーガニック認証制度が無いため、各認証機関が認証制度となっている。同じオーガニック農業だとしても各認証機関でズレが生じるのである。また、各認証機関の規則に沿うため、一切農薬や殺虫剤を使っていなくてもどれかの認証機関に属してない限り、オーガニック農産物であるとは言えない。日本のJASやアメリカのUSDA Organicの場合、どの農法(バイオダイナミック農法や炭素循環農法、自然農法…等)でもJASやUSDA Organicの規則に属していれば、オーガニック農産物として扱われる。しかし、ベトナムでは農法によってオーガニック農産物と定められるので、炭素循環農法をベトナムでやったところでEMROにもPGSにも属していないとオーガニック農産物とは扱われない。



【問題点2】

この農場のオーナーも経験している通り、ビジネスマンとして農場経営をしている人には政府のサポートが無い。なぜ、政府はビジネスマンに対してサポートしないのかは前回にも書いたので割愛するが、農家グループへのサポートも、ビジネスマンへのサポートも面積や栽培品目を考えてもさほど変わらないと思う。それよりも政府がサポートを打ち切ったときに継続して行けるのはビジネスマンの方が可能性は高い。また、「サポートを受けられると知らなかった」と情報伝達にも誤差が生じている。今回だけでなく農場毎で政府のサポートに対して異なる声が挙げられていた。ここからは推測でしか無いが、各地域のFUまたはグループのリーダーがうまく機能していいないことまたは問題を上手く発見出来ていないことが原因なのではないかと考えられる。なぜなら、政府はサポートの申請が無いと動かないのである、つまり、申請があれば動くということである。しかし申請の仕方がわからないという声やサポートがあることをそもそも知らなかったという声が聞こえることからこれらのことが推測できる。