農業、食、コミュニティと時々落語。

これまでと今とこれから。

インタビューその1

【仮説】
ベトナムに来た理由は、ベトナムにおけるオーガニック農業の意識調査が主な目的である。私はベトナム戦争を機に、ベトナム人の農薬や除草剤などの化学薬品に対してのイメージが良い方に変わっているのではないかと仮説を立てた。もし、そうであればベトナム国内ではオーガニックとまではいかないものの、それに近い考えまた、オーガニックに対して強い意識を持っていることになる。いまの時代ネットで情報は手に入るものの「マザーハウスの山口さんがテレビで「一次情報しか信じない」と言っていたから私も自分の目で確かめに来たのだ。



【はじめに】
2014年9月9日(火)にVietnam Farmers Union(ベトナム農業組合 以下:VFU)のVietnam Organic Agriculture Association(ベトナムオーガニック農業課 以下:VOAA) で所長さんをしているMICHさんにインタビューしてきた。ベトナムでは8年前の2006年にオーガニック農業というものがVFUによって存在が発見され、デンマークのAgricultural Development Denmark Asia(デンマークアジア農業開発 以下:ADDA)とVietnam Farmers Union (ベトナム農民組合 以下:VNFU) によってベトナムでオーガニック農業普及プロジェクトが始まった。5年後の2011年にベトナムオーガニック農業団体であるVOAAが発足された。また、確認されたオーガニック農家が8年前というだけであって、それ以前にオーガニック農家は存在したと思われる。2012年にこのプロジェクトは終わってるが、VOAAは継続を決め、VOAAが管轄するオーガニック農場が2013年に2つハノイにできた。その後ベトナム各地に6つまで増えている。さらにVOAAが管轄する10以上のオーガニック食品店がハノイに存在している。この管轄の内の生産者-流通業者-消費者の距離は凄く近いらしく、消費者の要望があれば、オーガニック農家への見学ツアーも企画しているという。



【認証制度】
ベトナムのオーガニック農業にもParticipatory Guarantee System(PGS)というきちんとした認証制度があり、これの認証制度の規制に沿っていないとオーガニック農業をやっているとは言えない。このPGSはADDAとVNFUによって作られたものであり、IFOAM(国際有機農業運動連盟)という国際的なオーガニック農業基準に沿っているので、信頼出来る認証制度といえる。また、認証制度の中には日本の沖縄のEMRO(EM研究機構)から認証書類もあったが、これについてはよくわからない。この組織が独自でやっているものだと思われる。※EM(通称:EM菌)は安全で有用な微生物の複合体で、農業、畜産、水産、環境浄化、食品加工、土木建築、健康など様々な分野で応用されている、人と地球にやさしい技術とされている。(参照:http://www.emro.co.jp/)有機農業をやりたいといっても、それまでに農薬や除草剤を使っている場合、2-3年待たなければいけないのは日本もアメリカとおなじである。また、2-4-D(ダイオキシン)で汚染が確認されている場合はオーガニック認証は下りない。もちろん、過去に使用したり、汚染が確認されなければ有機農業への転向は簡易である。



【オーガニック農家】
ベトナムでは基本的にオーガニック農業をやる場合、農家のグループを作る。1つの地域の中に農家グループが存在しており、1つのグループでは沖縄のOrganic Livestock Systemを採用しているという情報もあった。ベトナムは政府管轄の土地でなければ、おおよそ個人が所属していると考えて良いので、農地の使い方は基本的に自由である。従って、有機農業にする方法は①政府の管轄地域にいる農家に有機農業をさせる。②政府管轄以外の農地へ有機農業について説明し、やりたいと言った農家が有機農業をする。この2つとなる。オーガニック農業をするこの農家のメリットは金利0%でお金を借りられ、尚且つ借りやすいと言っていたが、ちょっと調査不足。オーガニック農家はPGSによって監視されており、もし違反した場合はそのコミュニティから出て行かねばならない。違反金や懲役などは無い。



【価格の違い】

モノや状態によって違ってくるものの、オーガニック農産物は通常15%~30%値段が高く、高いものだと50%ほど高くなる。(これは多分、卸値計算だと思うので店頭ではもう少し高くなるハズ)



【輸出と輸入】
オーガニックライスの輸出はしているが、オーガニック食品の輸入はしていない。輸入してもまあだオーガニックの認知度が低いので売れる見込みがあまり無いという。



【消費者】
前途した通りオーガニック農産物は高く、またオーガニックに対しての認知度もそんなに無いので消費者は教養がありお金持ちの人に絞られる。



【問題点】

オーガニック農業についての問題点を3つ挙げてくれた。
・政策の改定
・市場の増加
・どうやってオーガニックについての知識を広めるか
オーガニックの知識をどうやって広めていくかかが1番の問題点であり、そこが解決出来れば市場の増加は見込めるというMICHさんは言う。なぜなら、ベトナムのオーガニック認証制度はIFOAMに沿っているので信頼性があるからである。その是非は置いておいても、確かに知識を広めていくのはとても難しい問題である。



【仮説への答え】

最後に仮説で紹介した「ベトナム人のオーガニックまた化学薬品に対する意識はベトナム戦争で変わったか?」という部分について答えて貰った。変わっていないとは言わないが、それによって影響を受けたのはほんの微々たるものである。むしろ、それ以降に化学薬品による食品汚染で人体への健康被害が出てきてからいまの様なオーガニック食品を意識する人たちが増えた。特に、私達がいる北部は枯葉剤を受けた場所(南部)から遠いので、それほど大きな影響があったとは言えない。しかし、私達はオーガニック農業について「ベトナムで安全な食事を取る1つの信頼出来る方法である」と考えており、それらはとても大切なことである。70%以上の農地では農家・環境・作物にとって安全な方法を取られていないからね。



【結論】

私の仮説は見事に外れてしまったようだが、少なからず微々たる影響はあったと思わせてくれたのがせめてもの救いであろうか。そして、いまいる場所が北部というのも仮説に沿う結論に至らなかった1つのポイントであると信じたい。しかしながら、オーガニック農業そのもののニーズは確実に増えており、その理由としてはベトナム戦争と食品汚染という理由は違うもののやはり「安全・安心」がキーワードとなっていることは間違いない。そして、これからベトナムでは日本とベトナム政府による農業政策が始まるらしいので、そこでどのような動きがあるのかが見物である。



【まとめ】
ベトナムといえば、たくさんのバイク。そのバイクのほとんどは日本ブランドである。バイクが普及した理由は「利便性が高い」これが1番の理由であろう。知らないものを知り、それがどんなカタチであれ「良い」と人々が思えばそのモノは普及する。オーガニックの知識を持たない人たちへの普及はいかに「良い」と思わせるかが鍵だと思う。なまじ、日本人の様にオーガニックに対する半端な知識を持っている人たちへの普及よりもはるかに簡単なのではないだろうか。もちろん、1番の日常品であり、消耗品である食品はそんな簡単な問題ではないことはもちろんなのだが。